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怖がらせない。仕組みから守る。

追跡されにくいブラウザと検索エンジンの選び方【2026年版】

ブラウザと検索エンジンを乗り換えると何が変わり、何が変わらないのか。追跡の経路を4つに分け、各社の公式ドキュメントで既定の動作を確認したうえで、乗り換えなくてよい人の条件・移行の副作用・元に戻す手順まで整理します。

先に答えを書きます。ふだんSafariかFirefoxを使っていて、家族や同僚と端末を共有しておらず、検索するときはGoogleアカウントにログインしたまま——この状態なら、ブラウザを乗り換えても変わる部分はそれほど多くありません。SafariとFirefoxは、サイトをまたぐCookieの扱いを、追加設定なしの既定の状態ですでに制限しているからです。そして、ログインしたまま使う限り、後述する「経路2」はブラウザを替えても残ります。乗り換えの手間とサイトが壊れるリスクを払って得られるものは、この人の場合は小さくなります。

変える価値が出てくるのは、次のどれかに当てはまるときです。(1) Chromeを既定の設定のまま使っていて、サイトをまたぐ広告の追跡を減らしたい。(2) 検索した語そのものを、検索サービス側のアカウントに残したくない。(3) 拡張機能を入れずに、トラッカーの遮断を既定で効かせたい。この3つ以外の動機——たとえば「同居している人に見られたくない」——は、ブラウザを替えても解決しない種類の問題です。そちらは端末のロックとアカウントの分離の話になります。

そして、乗り換えても残るものがあります。ログイン中のアカウントに紐づく記録、訪問先のサイトが自社のサーバに残すログ、回線を通る通信の宛先。ここはブラウザを替えても消えません。「このブラウザにすれば追跡されない」という一行にならないのは、追跡が1本の経路で起きていないからです。以下、経路を分けたうえで、どのブラウザがどこに効くのかを、各社の公式ドキュメントで確認できた範囲で並べます。

「追跡される」と呼んでいるものは、4つの別の経路

ひとまとめに語られがちですが、中身は別々の仕組みです。分けないと、どの対策がどこに効くのかが判断できません。

経路1: サードパーティCookie。 訪問先のサイトに埋め込まれた別ドメインの部品(広告枠、計測タグ、SNSのボタン)が、自分のドメインのCookieを読み書きし、サイトをまたいで同じ訪問者だと結びつける経路です。ブラウザの設定が直接効くのはここです。

経路2: ログイン中のアカウント。 GoogleやAppleやSNSにログインしたまま操作している間は、そのサービス側は「誰が」を把握しています。Cookieの遮断とは別の層です。ブラウザを替えても、同じアカウントでログインすれば同じことが起きます。

経路3: ブラウザと端末の特徴の組み合わせ(フィンガープリント)。 画面サイズ、言語設定、タイムゾーン、フォントの構成、描画の細かな差。ひとつひとつは個人を指しませんが、組み合わせると端末を絞り込む手がかりになります。ブラウザによっては一部を抑える機能を持ちますが、抑えきる種類の話ではありません。

経路4: 回線とネットワーク。 契約しているインターネットサービスプロバイダ、職場や学校のネットワーク管理者、経由するWi-Fi。ここからは接続先のドメインなどが見えます。ブラウザの選択は、この層にはほとんど効きません。

ブラウザの乗り換えが効くのは、主に経路1と、経路3の一部です。経路2と経路4はそのまま残ります。この配分を頭に置いてから、以下の各社の既定動作を読んでください。

主要ブラウザは、既定の状態で何をしているのか

各社が公式に説明している内容です。当編集部の端末で1項目ずつ動作確認したものではありません(この記事の検証区分は後述します)。

Safari(WebKit)。 WebKitは自社のトラッキング防止ポリシーで、Intelligent Tracking Prevention(ITP)が既定でサードパーティCookieをブロックし、このブロックに例外を設けていないと記載しています。あわせて、サードパーティのリファラをオリジンまで削ること、LocalStorage・IndexedDB・Service Workerといった保存領域をファーストパーティのサイト単位で分離すること、HTTPキャッシュも同様に分離することを挙げています(出典: WebKit「Tracking Prevention Policy」https://webkit.org/tracking-prevention/ 、2026年8月7日確認)。Mac版Safariの設定のプライバシー項目には、サイトをまたぐトラッキングを防ぐための設定が置かれています。Appleは、第三者のコンテンツ提供元をファーストパーティのサイトとして訪問・操作しない限り、そのCookieとデータは削除されると説明しています(出典: Apple「Prevent cross-site tracking in Safari on Mac」https://support.apple.com/guide/safari/prevent-cross-site-tracking-sfri40732/mac 、2026年8月7日確認)。

Firefox。 MozillaはTotal Cookie Protectionを既定で有効にしており、訪問するサイトごとに別々の「クッキーの瓶」を作り、トラッカーが複数サイトにまたがって行動を結びつけられないようにする、と説明しています。同社は、この機能をデスクトップの全ユーザーに既定の機能にしたと記載しています(同記事はWindows・Mac・Linux・AndroidでFirefoxが利用できることに触れていますが、既定化の範囲としてはデスクトップの全ユーザーと書かれています)(出典: Mozilla「Firefox rolls out Total Cookie Protection by default to more users worldwide」https://blog.mozilla.org/en/products/firefox/firefox-rolls-out-total-cookie-protection-by-default-to-all-users-worldwide/ 、2022年6月14日公開・2024年8月28日更新、2026年8月7日確認)。Cookieを一律に消すのではなく、サイトごとに閉じ込めて共有させない方式である点が、遮断リストに頼る方式との違いとして説明されています。

Chrome。 ここは誤解が残りやすい部分です。Googleは2025年4月22日の投稿で、ChromeにおけるサードパーティCookieの扱いについて「現在のアプローチを維持する」と述べ、サードパーティCookie専用の新しい選択プロンプトは導入しない方針を示しました。利用者はChromeのプライバシーとセキュリティの設定で自分で選ぶ形が続きます(出典: Google「Next steps for Privacy Sandbox and tracking protections in Chrome」https://privacysandbox.google.com/blog/privacy-sandbox-next-steps 、2025年4月22日投稿、2026年8月7日確認)。つまり、「ChromeがサードパーティCookieを廃止した」という前提で書かれた説明は、現在の状態と噛み合いません。Chromeのヘルプでは、サードパーティCookieについて「許可」「シークレットモードでブロック」「すべてブロック」を選べること、既定はシークレットモードでのブロックであること、そしてブロックすると一部のサイトが期待どおりに動かない場合があることが説明されています(出典: Google「Delete, allow, and manage cookies in Chrome」https://support.google.com/chrome/answer/95647 、2026年8月7日確認)。Chromeを使い続けたい人が今日できるのは、この設定を「すべてブロック」に寄せて、壊れたサイトだけ例外にする運用です。

Brave。 Braveは、Shieldsが既定でトラッカー、サイトをまたぐCookieによる追跡、フィンガープリントなどをブロックすると説明しています。アドレスバーのShieldsアイコンから、何がブロックされたかの一部を確認できるとも記載しています(出典: Brave「Privacy Features」https://brave.com/privacy-features/ 、2026年8月7日確認)。同社はTor接続を使うプライベートウィンドウについて、閲覧速度が低下し得ることも書いています。

読み比べると分かるのは、SafariとFirefoxとBraveは既定の側でサードパーティCookieを制限する設計、Chromeは利用者の設定に委ねる設計、という違いです。ここが乗り換えの実質的な中身であって、「追跡されるかされないか」の二択ではありません。

検索エンジンを替えると、何が変わって何が変わらないのか

変わるのは1か所だけです。検索した語そのものを、どの事業者のサーバに送るか。 これは大きい変化ですが、これだけです。

変わらないもの: 検索結果をクリックして訪問した先のサイトが残すログ。回線事業者から見える接続先。ログイン中のアカウントに紐づく記録。端末に残る閲覧履歴。検索エンジンを替えても、この4つはそのままです。検索履歴が誰にどう見えるのかは層ごとに分かれるので、そこだけを詳しく知りたい場合はこちらを読んでください検索履歴は誰に見えるのか — 端末・アカウント・回線・サイトの4層で切り分ける

そのうえで、各社が自社について何を表明しているかを見ます。ここは当編集部に検証手段がない領域です。 事業者のサーバ内部で実際にどう扱われているかを外から確かめる方法を、当編集部は持っていません。以下は「事業者がそう表明している」という事実の記録として読んでください。

DuckDuckGoは、DuckDuckGoで検索したときに検索・チャット・閲覧の履歴を保存または共有しないこと、検索や訪問と並べてIPアドレスを保存せず、本人に結びつけ得る形でIPアドレスをディスクへ記録しないことを表明しています。広告については、閲覧しているだけなら匿名であり、広告は「人」ではなく表示中の検索結果ページに基づいて出す、と説明しています(出典: DuckDuckGo「Privacy Policy」https://duckduckgo.com/privacy 、2026年8月7日確認)。

Brave Searchは、利用者・端末・検索についての個人情報を収集しないこと、プロファイリングや追跡に使える情報をウェブへ送信しないことを表明しています。検索インデックスについては、他の検索エンジンから独立した自前のインデックスを構築し、結果はそこからのみ提供すると記載しています(出典: Brave「Brave Search Privacy Policy」https://search.brave.com/help/privacy-policy 、2026年8月7日確認)。

検索エンジンを替えるかどうかの判断は、この「表明を信じる範囲をどこに置くか」の判断とほぼ同じです。検証できないものを検証できたように書かない、というのがこの記事の立場なので、どちらが優れているかの順位づけはしません。

「シークレットモードにすれば残らない」がなぜ噛み合わないのか

乗り換えを検討する前に、ここを整理しておくと判断が楽になります。シークレットモード(プライベートブラウジング)が消しているのは、自分の端末に残る側の記録です。

Google自身が、シークレットモードのセッション終了後にChromeがサイトのデータや訪問したサイトの記録を保持しないこと、Googleアカウントへ自動的にログインしないことを説明しています。同時に、訪問先のサイト(Googleのサイトを含む)や、学校・勤務先・インターネットサービスプロバイダのようにネットワークを管理する組織は、シークレットモードでの利用状況を把握し得るとも明記しています。シークレットモードではサードパーティCookieが既定でブロックされることも同ページに書かれています(出典: Google「Browse in Incognito mode」https://support.google.com/chrome/answer/95464 、2026年8月7日確認)。

つまりシークレットモードは、端末を共有している相手に履歴を見せないためには働き、経路2・経路4に対しては働きません。ここを取り違えたまま「シークレットモードで足りるからブラウザは替えなくていい」と判断すると、想定と実際がずれます。

日本のサイトで見かける「外部送信について」は何か

日本では、ウェブサイトやアプリの提供者が利用者の端末に外部送信を指示するプログラムを送る場合、送信される情報の内容などをあらかじめ通知・公表することを求める「外部送信規律」が置かれています。対象になる情報には、Cookieに保存されたIDや広告IDなどが含まれると総務省は説明しています(出典: 総務省「自分に関する情報が第三者に送信される場合、自身で確認できるようになります。」https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/d_syohi/gaibusoushin_kiritsu.html 、2026年8月7日確認)。

サイトのフッターに「外部送信について」というリンクが増えたのはこの流れです。ブラウザを替えるかどうかを考える前に、よく使うサイトのこのページを1つ開いてみると、自分の環境で何が外へ出ているのかが、抽象論ではなく具体名で読めます。これは無料で、今日できることです。

乗り換えると、何が壊れるのか

副作用を先に把握しておかないと、途中で戻すことになります。実際に起こりやすいのは次の4つです。

同期が切れる。 ブックマーク、保存したパスワード、開いていたタブ、拡張機能の設定は、元のブラウザのアカウントに紐づいています。新しいブラウザへ移すには、エクスポートとインポートを自分で行う必要があります。パスワードを元のブラウザに保存したまま乗り換えると、ログインのたびに古いブラウザを開くことになりがちです。

拡張機能が変わる。 拡張機能はブラウザごとのストアで配布され、同じ名前でも対応状況が異なります。移行先で同じ構成を再現できるとは限りません。

サイトが壊れる。 サードパーティCookieの遮断を強めるほど、ログインの保持、外部決済への遷移、埋め込み動画やチャットの読み込みが止まることがあります。Google自身も、サードパーティCookieをブロックすると一部のサイトが期待どおり動作しない場合があると書いています(出典は前掲のChromeヘルプ)。壊れたときの切り分け方は別記事で扱っています「uBlock Originの入れ方と、サイトが壊れたときの戻し方」

検索結果の質が変わる。 検索エンジンを替えると、地域に依存する検索(近所の店、路線、行政の窓口)や、日本語のニッチな語での結果の出方が変わります。良し悪しではなく、慣れの問題として時間がかかります。

壊れにくい乗り換えの順番と、元に戻す手順

一度に全部を切り替えないことが要点です。次の順序なら、途中でやめても損失が小さくて済みます。

  1. 併用から始める。 新しいブラウザをインストールしても、既定のブラウザは当面そのままにします。まず「調べもの」だけを新しい方でやってみて、2週間ほど様子を見ます。
  2. パスワードの置き場所を先に決める。 ブラウザ内蔵の保存機能に依存していると、乗り換えのたびに詰まります。ブラウザから独立した管理手段へ先に移しておくと、以後のブラウザ変更が単なるアプリの入れ替えになります。
  3. ブックマークをファイルで書き出す。 主要ブラウザはブックマークをHTMLファイルとして書き出せます。これを手元に置いてから移せば、移行先が合わなかったときに戻せます。
  4. 検索エンジンの変更は最後に、単独で。 ブラウザと検索エンジンを同時に替えると、不便を感じたときにどちらが原因か切り分けられません。
  5. 既定のブラウザの切り替えは、そのあと。 ここまでで問題がなければ、OSの設定で既定を変更します。

元に戻すとき。 OSの設定から既定のブラウザを元のものに戻し、書き出しておいたブックマークのHTMLファイルをインポートし、検索エンジンの設定を元に戻します。新しく試したブラウザは、しばらく残しておいて構いません。アンインストールを急ぐと、そちらにだけ保存した情報を取りこぼします。

この記事で検証したこと・していないこと・検証できないこと

検証済み: この記事にはありません。 実機での測定を行っていないので、「検証済み」に分類できる記述はゼロです。この欄が空になったことを、書かずに済ませることはしません。

未検証: 上記の各ブラウザの既定動作。各社の公式ドキュメントに書かれている内容を引き、URLと確認日を付けましたが、当編集部の端末で1項目ずつ挙動を確認したものではありません。Firefoxの設定にある「標準」「厳格」といったモード間の差分も、本記事では扱っていません(公式サポート記事の本文を取得できなかったため)。各社のドキュメントは更新されます。読む時点での記載は、リンク先でご確認ください。

検証不能: 検索サービスやブラウザ事業者が、自社のサーバ内部で実際に何を保存していないか。上に引いたのは、いずれも事業者による表明です。当編集部にこれを外部から確かめる手段はありません。第三者監査の有無や内容も、本記事では確認していません。

自分の環境が今どうなっているかを、先に見る

ここまで読んで「結局どれにすればいいのか」と思われたなら、順序を逆にすることをおすすめします。乗り換えを決める前に、今使っているブラウザが何を外に渡しているかを見る。 何も渡していない項目のために乗り換えるのは、手間の払い損です。

その結果を見てから、この記事の冒頭に戻ってください。3つの条件のどれにも当てはまらなければ、乗り換えなくて構いません。


本記事の内容は、記載の確認日時点で当編集部が確認できた情報にもとづいています。価格・仕様・提供条件は、事業者の判断により予告なく変更されることがあります。ご契約・ご購入の前に、事業者の公式ページで最新の情報をご確認ください。

本記事は特定の商品・サービスの利用を推奨するものではなく、また法律・医療・投資に関する助言を行うものでもありません。